
目次
こんにちは、柏の葉キャンパス矯正歯科の院長の小松です。
「矯正を始めるなら、親知らずは抜いたほうがいいですか?」
カウンセリングで、よくいただく質問です。
インターネットで調べると「矯正前にすべて抜くべき」と書かれていたり、逆に「抜かなくていい」と書かれていたりします。言っていることが正反対で、戸惑われるのも当然だと思います。
結論からお伝えします。矯正治療で親知らずを抜くかどうかは、症例によって変わります。「矯正をするなら、とりあえず全部抜く」という考え方を、当院は取っていません。
この記事では、当院が実際にどういう基準で判断しているかを、抜く場合・抜かない場合・むしろ活用する場合に分けてお話しします。抜くタイミングの考え方や、「親知らずが歯並びを悪くする」という有名な説が、研究ではどう扱われているかにも触れます。
親知らず(第三大臼歯)とは
親知らずは、前から数えて8番目の歯です。10代後半から20代前半にかけて生えてくることが多く、歯科では第三大臼歯、あるいは智歯と呼びます。
生え方は人によって大きく違います。
- まっすぐ生えて、しっかり噛んでいる
- 斜めや横向きに埋まっている
- 骨の中に完全に埋まったまま出てこない
- そもそも、もともと存在しない
4本すべてがそろっている人もいれば、1本もない人もいます。日本人では、どれかが生まれつきない方が珍しくありません。
矯正の相談では、まずパノラマレントゲンで「何本あるか」「どの向きか」「どれくらい深いか」「7番目の歯(第二大臼歯)に当たっていないか」を確認します。
当院が親知らずの抜歯をすすめる3つの場合
① 奥歯を後ろに動かす必要がある場合(遠心移動)
歯を抜かずにスペースをつくる方法のひとつに、奥歯全体を後ろへ動かす「遠心移動」があります。
このとき、後ろに親知らずがあると、動かす先に壁があることになります。行き先をふさいでいる状態なので、先に抜く必要があります。

遠心移動を使った実際の治療については、マウスピース矯正で出っ歯を非抜歯治療した症例でご紹介しています。
② 7番目の歯(第二大臼歯)をコントロールする必要がある場合
7番目の歯を、起こしたり、沈めたり、角度を変えたりする必要がある症例があります。
このとき、親知らずが7番に接触していると、思った方向に動かせません。親知らずが7番を押している状態では、動かしても戻されてしまいます。この場合も抜歯の対象になります。

③ 矯正治療中の虫歯のリスクが高い場合
親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくい歯です。斜めに生えていると、7番との間に汚れがたまり続けます。
矯正治療は数年かかります。その間、磨きにくい親知らずを残しておくと、親知らず自体だけでなく、手前の7番まで虫歯にしてしまうことがあります。7番は噛み合わせの要となる歯なので、ここを失う損失は大きいです。
治療前の検査で虫歯のリスクが高いと判断した場合は、抜歯をおすすめしています。

矯正中の虫歯予防については、ワイヤー矯正とマウスピース矯正、虫歯になりやすいのはどっち?もあわせてご覧ください。
当院が親知らずを抜かない4つの場合
① 若い方に、必要のない抜歯はしません
10代や20代前半の方で、矯正治療に影響していない親知らずであれば、抜くことをすすめません。
抜歯は体への負担をともなう処置です。下の親知らずでは、下顎管(神経や血管が通る管)に近いこともあります。治療に必要ないのであれば、介入しないほうがよいというのが当院の考えです。
「将来いつか問題になるかもしれないから、今のうちに」という理由だけでは、抜歯の根拠として十分ではないと考えています。

② 小臼歯を抜く症例では、時期を相談して決めます
前から4番目・5番目の歯(小臼歯)を抜く矯正では、矯正治療後に奥歯が前の方に移動していきます。すると、親知らずの前にスペースができて、抜きやすい位置まで自然に動いてくることがよくあります。
深く埋まっていた親知らずが、治療後には起き上がって、抜歯の負担が軽くなっているわけです。
ですから、この場合は「必ず治療前に抜く」のではなく、治療後の位置を見てから相談して決めるようにしています。

小臼歯を抜く矯正については、矯正で抜歯は必要?抜く歯・費用・リスクで詳しく解説しています。
③ 6番や7番に大きな虫歯がある場合
手前の歯(6番や7番)に大きな虫歯がある、あるいは神経を取った歯がある場合、将来その歯を失う可能性を考えておく必要があります。
そのとき、親知らずが残っていれば、後述する「移植」や「代用」という選択肢が使えます。先に抜いてしまうと、この手が使えなくなります。
④ 将来、移植のドナー歯になる可能性がある場合
親知らずは、自分の歯を移植する(自家歯牙移植)ときのドナー歯になります。
他の歯を失ったとき、インプラントやブリッジではなく、自分の親知らずを移し替えるという方法です。歯根膜(歯と骨の間のクッション)ごと移植できるため、自分の歯として機能します。
矯正治療に影響していない健康な親知らずは、将来のための資産と考えることもできます。
親知らずを「使う」こともあります
抜くか抜かないかだけでなく、積極的に活用する選択肢もあります。
① 7番が大きくずれている場合、7番を抜いて親知らずを使う
7番目の歯が大きく転位している(倒れている、位置がずれている)症例では、7番を正しい位置に戻すのに大きな負担がかかります。
このとき、親知らずの歯の形と根の形がきれいであれば、7番のほうを抜いて、親知らずを7番の位置まで動かして使うことがあります。

② 6番や7番に大きな虫歯や神経処置がある場合
状態の悪い歯を残して矯正するより、その歯を抜いて、親知らずを前に動かして並べるほうが、結果として良い噛み合わせになる症例があります。
どちらの方法も、親知らずの形や根の状態、動かす距離を見たうえでの判断になります。親知らずは「じゃまもの」とは限りません。

────────────────────
「自分の親知らずは抜いたほうがいいのか」は、レントゲンを見ないと判断できません。生えている向き、7番との位置関係、必要な歯の動きによって、答えが変わるためです。
当院では初回カウンセリングで抜く場合・抜かない場合の考え方をご説明しています。
▶ 初めての方へ(カウンセリングの流れ) ▶ WEB予約はこちら ▶ お電話:04-7192-7894
────────────────────
「親知らずが歯並びを悪くする」は本当か
ここは、多くの記事で書かれていることと、研究の結果が食い違っている部分です。
よく見かけるのは、こういう説明です。
親知らずが前の歯を押すから、下の前歯がガタガタになる。だから矯正前に抜くべきだ。
直感的には、わかりやすい説明です。しかし、この因果関係を裏づける証拠は、現在のところ十分ではありません。
この問題を扱った研究をまとめた系統的レビューでは、親知らずが下の前歯の叢生(ガタガタ)や矯正後の後戻りを引き起こすという説を支持する十分な根拠は得られていない、と報告されています(文献1、文献2)。
下の前歯のガタガタは、親知らずの有無にかかわらず、年齢とともに起こる変化として知られています。実際、親知らずがもともとない方でも、同じように起こります。
つまり、
- 「後戻りを防ぐために親知らずを抜く」という目的だけでは、抜歯の根拠として弱い
- 後戻りを防ぐために確実なのは、保定装置(リテーナー)を使い続けること
ということになります。保定については矯正の保定期間はいつまで?で解説しています。
ただし、これは「親知らずを抜く必要がない」という意味ではありません。先に挙げたように、歯を動かす計画の上で邪魔になる場合や、清掃できず虫歯のリスクが高い場合には、抜く理由があります。抜く理由を「後戻り予防」ではなく、治療計画上の必要性で説明すべきだ、ということです。
なお、「親知らずを抜けば口元(口ゴボ)が引っ込むか」というご質問もよくいただきます。これは別のテーマなので、口ゴボはどこまで治る?をご覧ください。
抜くタイミングはいつか
| 状況 | タイミング |
|---|---|
| 奥歯を後ろに動かす必要がある(遠心移動) | 矯正治療を始める前 |
| 小臼歯を抜く症例 | 治療中、または治療後に相談して決める |
| 若い方で、治療に影響しない | 急がない。経過を見る |
| その他 | ケースバイケース |
遠心移動を行う症例だけは、動かす先を空けておく必要があるため、治療開始前になります。
それ以外は、一律に決めていません。治療中に抜くこともあれば、治療が終わってから、親知らずが抜きやすい位置に出てきたところで抜くこともあります。「とりあえず最初に全部」ではなく、必要な時期に必要な分だけという考え方です。
抜歯はどこで受けるのか
当院では、親知らずの抜歯は提携している口腔外科へご紹介しています。
理由は2つあります。
ひとつは、埋まっている親知らずの抜歯は、下顎管(神経の通り道)や上顎洞(鼻の奥の空洞)との位置関係によって、専門的な対応が必要になるためです。
もうひとつは、CTによる精密な診断と、外科処置に慣れた環境で受けていただくほうが、患者さんの負担が少ないと考えているためです。
紹介状の作成から日程の調整まで、当院でご案内します。ご自身で探していただく必要はありません。抜歯後、傷の治りを確認してから矯正治療を進めます。
費用の扱いは、紹介先での診断内容によって変わります。ご紹介の際に、見通しをあわせてご説明します。
当院の矯正治療について
| 項目 | 費用(税込) |
|---|---|
| 精密検査料 | 49,500円 |
| 基本料金 | 880,000円〜(装置により異なります) |
| 再診料 | 5,500円 / 回 |
※矯正歯科治療は、公的健康保険適応外の自費(自由)診療です。 ※親知らずの抜歯費用は上記に含まれません。
本治療におけるリスクと副作用
- 歯根吸収(歯の根が短くなることがあります)
- 歯肉退縮(歯ぐきが下がることがあります)
- 後戻り(保定装置を使用しない場合、歯が元の位置に戻ることがあります)
- 知覚過敏、歯髄充血
- 治療中に虫歯・歯周病が生じることがあります
- 治療計画の変更により、治療期間が延長することがあります
※治療効果やリスクには個人差があります。
親知らずの抜歯にともなうリスク(紹介先で詳しくご説明があります)
- 腫れ、痛み、出血
- 下歯槽神経の近接による、一時的またはまれに持続する知覚の異常
- 上顎洞との交通
- ドライソケット(抜歯窩の治りが遅れる状態)
柏の葉キャンパス矯正歯科の考え
私が親知らずについて大切にしているのは、抜く理由を説明できるかどうかです。
「矯正をするから、とりあえず4本抜きましょう」という説明は、患者さんにとって分かりやすい反面、本当に必要だったのかが検証されません。抜いた歯は戻ってきません。
当院では、抜歯をおすすめするとき、
- どの歯を、なぜ抜く必要があるのか
- 抜かなかった場合、治療計画にどう影響するのか
- いつ抜くのが負担が少ないか
をご説明したうえで、ご相談して決めています。
逆に、「将来のため」という漠然とした理由だけで抜歯をおすすめすることはしません。特に若い方では、必要のない外科処置を避けたいと考えています。
そして、親知らずは残しておけば、将来歯を失ったときの移植のドナーになり、7番の状態が悪ければ代わりに使うこともできます。一律に不要な歯として扱うべきではないというのが、私の考えです。
よくあるご質問
Q1. 矯正を始める前に、親知らずは全部抜かないといけませんか?
いいえ。抜く必要があるかどうかは、必要な歯の動き、親知らずの向き、清掃のしやすさによって判断します。当院では、治療計画上の理由がある場合に抜歯をおすすめしています。
Q2. 親知らずを抜かないと、矯正後に歯並びが戻りますか?
研究では、親知らずが後戻りの原因になるという説を支持する十分な根拠は得られていません。後戻りを防ぐために確実なのは、保定装置を使い続けることです。
Q3. 埋まっている親知らずも抜くのですか?
歯を動かす計画に影響しなければ、埋まっているだけでは抜く理由になりません。ただし、7番の根を圧迫している場合や、周囲に病変がある場合は抜歯を検討します。
Q4. 親知らずの抜歯は、どこで受けられますか?
当院から提携先の口腔外科へご紹介します。紹介状の作成と日程のご案内は当院で行います。
Q5. 抜歯してから、どれくらいで矯正を始められますか?
傷の治り方によりますが、数週間程度で治療を進められることが多いです。抜歯と同時に装置をつける場合もあります。
Q6. 親知らずを移植に使えると聞きました。本当ですか?
条件が合えば可能です。歯の根の形、移植する場所の骨の状態、年齢などが関係します。すべての方に適応できるわけではありませんが、健康な親知らずは選択肢のひとつになります。
Q7. 抜歯が怖いのですが、どうすればよいですか?
遠慮なくお伝えください。抜く必要が本当にあるのか、いま抜くべきか、治療後でもよいのかを含めて、一緒に検討します。
まとめ
- 矯正で親知らずを抜くかどうかは、症例によって変わります
- 当院が抜歯をすすめるのは、奥歯を後ろに動かす場合・7番を動かす場合・虫歯のリスクが高い場合
- 抜かないのは、若い方で治療に影響しない場合・小臼歯を抜く症例・手前の歯の状態が悪い場合・移植のドナーになりうる場合
- 親知らずが歯並びを悪くするという説は、研究では十分に支持されていません
- タイミングは一律ではなく、遠心移動が必要な場合のみ治療開始前
- 抜歯は提携の口腔外科へご紹介します
────────────────────
柏の葉キャンパス矯正歯科では、初回カウンセリングを受け付けています。
「親知らずを抜くべきか知りたい」「他院ですべて抜くと言われたが、本当に必要か相談したい」という方は、一度ご相談ください。レントゲンを確認したうえで、抜く場合・抜かない場合の考え方をご説明します。
▶ 初めての方へ(カウンセリングの流れ) ▶ WEB予約はこちら ▶ お電話:04-7192-7894
柏の葉キャンパス駅から徒歩2分。流山おおたかの森駅、柏たなか駅、守谷駅からもお越しいただいています。
────────────────────
関連記事
- 矯正で抜歯は必要?抜く歯・費用・リスクを柏市の矯正歯科が解説
- 口ゴボはどこまで治る?抜歯の必要性と口元の変化量
- 矯正の保定期間はいつまで?後戻りを防ぐリテーナーの使い方
- 歯科矯正用アンカースクリューとは?
- マウスピース矯正で出っ歯を非抜歯治療した症例【35歳男性】
参考文献
- Zawawi KH, Melis M. The role of mandibular third molars on lower anterior teeth crowding and relapse after orthodontic treatment: a systematic review. The Scientific World Journal. 2014;2014:615429.
- Stanaitytė R, Trakinienė G, Gervickas A. Do wisdom teeth induce lower anterior teeth crowding? A systematic literature review. Stomatologija. 2014;16(1):15-18.
- Machado LA, do Nascimento RR, Ferreira DM, Mattos CT, Vilella OV. Long-term prognosis of tooth autotransplantation: a systematic review and meta-analysis. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2016;45(5):610-617.




