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柏市の矯正専門歯科医院柏の葉キャンパス矯正歯科です。
当院で矯正治療を開始される方の約半数がワイヤー矯正治療を希望されます。
矯正治療を検討されている皆さんは、インターネットやSNSで様々な情報を集めていることと思います。装置の種類、治療期間、痛みの有無、そして費用など、気になるポイントは沢山あるでしょう。 しかし、矯正治療の仕上がりや質を決定づける最も重要な要素の一つが、「最初にブラケット(装置)をどの位置に貼るか」であることは、あまり知られていません。
今回は、当院がこだわって行っている「インダイレクトボンディング法(間接法)」という手法について、なぜその方法が選ばれているのか、そして当院独自のデジタル技術とチーム医療がどのように関わっているのかを、詳しく解説していきます。 少し長い記事になりますが、これから矯正治療を始める方にとって、治療の裏側にある「こだわり」を知っていただくための大切な内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
はじめに:矯正治療における「ブラケット」の役割
ワイヤー矯正(表側矯正・裏側矯正)において、歯の表面に取り付ける小さな四角い装置を「ブラケット」と呼びます。 多くの患者様は、ブラケットそのものが歯を動かしているようなイメージをお持ちかもしれませんが、実際には少し違います。
歯を動かすための動力源は、ブラケットに通された「ワイヤー」の力です。ブラケットは、そのワイヤーの力を歯に伝えるための「ハンドル」のような役割を果たしています。 車を運転する時、ハンドルを右に切れば車体は右へ、左に切れば左へ動きます。これと同じように、ブラケットを歯のどの位置、どの角度に取り付けるかによって、歯が動く方向や最終的な到達点が決まってしまうのです。
つまり、ブラケットは単なる留め具ではなく、歯の動きをコントロールするための司令塔なのです。
なぜ、ブラケットの「位置」が重要なのか
「歯にブラケットをつけて、ワイヤーを通せば、自然と綺麗な歯並びになる」 そう思われている方も多いかもしれません。しかし、矯正治療はそれほど単純なものではありません。
ブラケットの位置決め(ポジショニング)は、矯正歯科医にとって最も神経を使う、職人技とも言える工程です。なぜなら、ブラケットの位置がわずか0.1ミリ、あるいは角度が1度でもズレていれば、歯はその「ズレた位置」に向かって動いてしまうからです。
1. 歯の動きの効率が変わる
正しい位置にブラケットが付いていれば、ワイヤーの力が効率よく伝わり、最短距離でゴールに向かって歯が移動します。しかし、位置が適切でない場合、歯が予期せぬ方向に動いてしまうことがあります。これを修正するために余計な治療期間がかかり、患者様の負担が増えてしまいます。
2. 「見た目」と「機能」の両立
歯並びの美しさは、歯の先端のラインが揃っていることだけではありません。歯の軸(傾き)が適切であること、上下の歯がしっかりと噛み合うこと、そして笑った時の歯の見え方が美しいこと。これら全てを達成するためには、治療のゴール地点から逆算して、一つひとつの歯に対して最適なブラケットの位置を決定する必要があります。
「とりあえず真ん中に貼っておけば良い」というものではなく、それぞれの歯の形、大きさ、すり減り具合などを考慮した、オーダーメイドの設計図が必要なのです。
ブラケットを装着する2つの方法:「ダイレクト法(直接法)」と「インダイレクト法(間接法)」
では、実際にどのようにしてブラケットを歯に装着するのでしょうか。大きく分けて「ダイレクト法(直接法)」と「インダイレクト法(間接法)」の2つの手法があります。
ダイレクト法(直接法)とは
その名の通り、ドクターが患者様の口の中で直接、歯にブラケットを接着していく方法です。 従来から広く行われている手法であり、準備がシンプルで済むという利点があります。しかし、この方法にはいくつかの難しさも伴います。
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視野の制限: お口の中は暗く、狭いため、奥歯などは特に見えにくくなります。また、頬や舌の動き、唾液の存在も正確な作業を妨げる要因となります。
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即時判断の難しさ: 診療チェアの上で、患者様に口を開けていただいている限られた時間内に、瞬時にベストな位置を判断し、接着剤が固まる前に位置を決めなければなりません。これには非常に高度な熟練と集中力が求められます。
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確認角度の限界: ドクターは基本的に患者様の正面や横から覗き込んで作業を行いますが、歯を真上から見たり、裏側から確認したりすることは物理的に不可能です。
インダイレクト法(間接法)とは
今回、当院が推奨しているのが、このインダイレクト法(IDB: Indirect Bonding)です。 これは、いきなり患者様の口の中にブラケットをつけるのではなく、「一度、お口の外。つまり歯型の模型上で位置決めを行い、それを専用のトレーを使ってお口の中に移す」という手法です。


歯科医師と歯科技工士でブラケットの位置決めをしています。
インダイレクト法(間接法)を採用する3つのメリット
当院がインダイレクト法にこだわる理由は、主に以下の3つの大きなメリットがあるからです。
メリット1:【客観性】あらゆる角度からの検証が可能
インダイレクト法の最大の利点は、お口の外でじっくりと位置決めができることです。 模型やデジタルの3Dモデル上であれば、ドクターは歯をあらゆる角度から観察できます。正面からはもちろん、お口の中では絶対に見ることができない「真裏」や「真下」、「真上」からの視点で、歯の捻れや傾きを確認できます。 時間制限や唾液に邪魔されることなく、0.1ミリ単位の微調整を納得いくまで行えるため、非常に客観的で正確なポジショニングが可能になります。
メリット2:【再現性】術者によるブレをなくす
ダイレクト法の場合、その日のドクターの体調や、患者様の姿勢、あるいは担当するドクターの経験値によって、どうしてもブラケットの位置に微妙な誤差が生じる可能性があります。 一方、インダイレクト法では、事前に設計した理想的なポジションを「トランスファートレー」というマウスピースのようなガイドに記録させます。 当日はこのトレーを歯にはめるだけで、誰が作業を行っても、設計通りの位置にブラケットを装着することができます。つまり、術者による技術の差や誤差が出ず、計画通りの再現性の高い治療を提供できるのです。
メリット3:【負担軽減】患者様の診療時間の短縮
患者様にとって、口を長時間開け続けていることは大きなストレスです。特に全ての歯にブラケットをつける日は、長時間に及ぶため顎が疲れてしまいます。 インダイレクト法では、一番時間のかかる「位置決め」の作業を患者様のいないところで行っています。来院当日は、完成したトレーを用いて一気に複数のブラケットを接着するため、ダイレクト法に比べてお口を開けている時間を大幅に短縮できます。これは、患者様の心身の負担軽減に大きく寄与します。
当院の特徴①:CTと口腔内スキャンの融合による「歯根」の可視化
ここまでは一般的なインダイレクト法のメリットをお話ししましたが、当院ではさらに一歩進んだ、デジタル技術を駆使したポジショニングを行っています。 それが、「歯根(歯の根っこ)情報の可視化」です。
歯は見えている部分が全てではない
お口の中で見えている白い歯の部分を「歯冠(しかん)」、歯茎の中に埋まっている根っこの部分を「歯根(しこん)」と呼びます。 一般的な矯正治療では、目に見えている「歯冠」の並びだけを見てブラケットの位置を決めることが多いのが現状です。しかし、歯冠がきれいに並んでいても、土台となる骨の中で「歯根」同士がぶつかっていたり、骨からはみ出しそうになっていたりしては、健康な歯並びとは言えません。
歯根データと歯冠データを重ね合わせるデジタル技術
そこで当院では、精密検査で撮影した「CTデータ(骨と歯根の情報)」と、口腔内スキャナーで取得した「歯型データ(歯冠の情報)」をデジタル上で融合させます。 これにより、コンピューター画面上に、患者様の歯を「歯冠から歯根まで丸ごと」再現することができます。
この「根っこまで見える状態」で作製するからこそ、 「この角度で歯を動かすと、根っこが骨から出てしまうかもしれない」 「ここの根と根が近いから、ブラケットの角度を微調整しよう」 といった、安全かつ生物学的に理にかなった判断が可能になります。 見えない部分まで可視化して設計する。これが、当院が目指す安全で質の高い矯正治療の根幹です。
当院の特徴②:院内歯科技工士との連携による製作
インダイレクト法を行うには、事前に模型上で位置決めをし、それを口の中に移すための「トランスファートレー」を作製する必要があります。 多くの歯科医院では、この作業を外部の歯科技工所に依頼しています。しかし、外部に依頼すると、データのやり取りや輸送に時間がかかるだけでなく、ドクターの細かなニュアンスが伝わりにくいという課題があります。
またダイレクト法と比較すると、事前準備に費やす時間と労力が非常に多く、ドクター一人ではなかなかそのような時間を確保することも難しいのが現状です。
院内に歯科技工士がいる強み
当院には、矯正専門の歯科技工士が常駐(在中)しています。これが非常に大きな意味を持ちます。 ドクターが考えるブラケットのポジションを、その場ですぐに歯科技工士と共有します。臨床現場ならではの細かな指示やディスカッションを、ドクターと技工士が顔を合わせて行うことができます。
デジタルで設計したデータをもとに、歯科技工士が実際の装置(トランスファートレー)を作製し、患者様一人ひとりに合わせた、オーダーメイドで精度の高い装置が完成します。これは、院内に技工部門を持つ当院ならではの特徴です。
実際の治療の流れ
それでは、実際に当院でインダイレクト法を用いて治療を行う際の流れをご説明します。
Step 1:精密検査データの取得
まずは、デジタルレントゲン(CT)による骨や歯根の三次元データと、口腔内スキャナーによる歯型のデジタルデータを取得します。従来の粘土のような材料での型取りは、基本的には行いませんので、嘔吐反射がある方でも安心です。
Step 2:検査データの重ね合わせとも重ね合わせデータの3Dプリント
取得したデータを統合し、作成した技工用のデータを3Dプリントします。プリントした歯列模型上で、ドクターがブラケットのポジションを指示し、ドクターと歯科技工士が連携し、治療計画を装置のデザインへと落とし込んでいきます。
Step 3:ブラケットの配置とトランスファートレーの作製(院内ラボ)
ブラケットを正しい位置に配置した後、歯科技工士がトランスファートレーを作製します。ブラケットが設計通りの位置に保持されるよう、精密に加工されます。
Step 4:インダイレクトボンディング(装着当日)
いよいよ装置をつける日です。歯の表面をクリーニングした後、完成したトランスファートレーを患者様のお口にはめます。 トレーの中にブラケットがあらかじめセットされていますので、一度に複数の歯にブラケットを接着することができます。接着剤が固まったらトレーだけを外し、ブラケットがお口の中に残ります。 最後にドクターが細部を確認し、ワイヤーを通して治療がスタートします。
まとめ:テクノロジーと専門スタッフの連携で目指す矯正治療
矯正治療は、長い期間をかけて行われる人生の大きなイベントです。だからこそ、そのスタート地点である「ブラケットの位置決め」には、妥協のない準備が必要です。
当院が行っているインダイレクトボンディング法は、決してドクターが楽をするための方法ではありません。むしろ、事前の準備や設計には、ダイレクト法の何倍もの時間と労力をかけています。 しかし、その「見えない準備」こそが、治療中のトラブルを減らし、治療期間の短縮につながり、そして何より患者様の健康な歯と美しい笑顔を守るために不可欠であると確信しています。
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デジタル技術による、歯根まで見据えた診断
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インダイレクト法による、正確で客観的な位置決め
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院内歯科技工士との連携による、迅速で緻密なモノづくり
これらを掛け合わせることで、当院は「ただ並べるだけ」ではない、医学的根拠に基づいた質の高い矯正治療を提供し続けていきます。
ご自身の歯並びについて、あるいは治療法について、より詳しく知りたい方は、ぜひ一度当院の初診相談にお越しください。あなたの歯の「見えない部分」までしっかりと確認し、最適な治療プランをご提案させていただきます。



